予算編成(Budgeting)
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目次
ITシステムにおける説明責任と予測可能な財務成果を確保するために、ビジネス目標に沿ってテクノロジー支出の制限を設定、監視、管理する、戦略的かつ継続的なプロセス。
テクノロジー予算編成戦略の策定
- 保留金(Holdback)戦略の策定(レベル、割合、要因)
- 適切な予算編成サイクルの確立(年次、四半期など)
予算の設定
- アプリケーションチームに健全な制約を課すための予算設定
- 予算が予測(Forecasting)に与える影響と情報の反映方法の決定
予算の追跡と管理
- 「予算対予測」および「予算対実績」の許容差異しきい値の確立
- サイクル外での予算変更が必要なシナリオにおける例外処理の定義
定義
FinOpsの予算編成は、組織が計画したテクノロジー活動をサポートするために承認された資金を確立し、その資金内での支出と価値を追跡し、必要に応じて透明性のある調整を行い、一貫した予算編成戦略を通じて予算化された各コストセンターの説明責任を確保します。
予算編成は通常、より広範なIT予算編成プロセスの一部として始まり、テクノロジー環境の複雑さが増すにつれて進化し成熟します。クラウド、AI、データクラウドプラットフォームといった現代のテクノロジーカテゴリの迅速な開発ペ ースとほぼ無限の容量により、組織は最終的に、保留金やサイクル外の調整によって柔軟性を持たせた、より短い予算編成サイクルを採用する必要があります。FinOpsチームは、予算編成を主に推進する財務(Finance)チームと協力し、予算編成戦略と保留金戦略を継続的に確立および調整する必要があります。
予算編成は、予測および計画と見積もり(Planning & Estimating)の両方に密接に関連しています。システムやアプリケーションの予算は、通常、それらのチームが提供する予測に基づきます。また、コストを異なるコストセンターにどのように配賦するかを定義する組織の配賦(Allocation)戦略や、毎期特定の予算コストセンターにコストを適用する請求とチャージバック(Invoicing & Chargeback)とも強い結びつきがあります。
しかし、予測がエンジニアリング(Engineering)およびプロダクト(Product)オーナーによる「一定の支出に対して一定の価値を提供する」という約束であるのに対し、予算編成はそれらのエンジニアリングまたはプロダクトオーナーに対して「特定のレベルで資金を提供する」という組織のコミットメントです。予算は、プロダクトチームが行っている業務を明確にサポートすると同時に、組織全体に価値をもたらす予算内で業務を行うよう、チームに健全な制約を提供するべきです。
予算は、特定の業務範囲に責任を持つ予算オーナーに配分されます。組織によっては、複数レベルの予算オーナーが存在する場合があります。各予算オーナーは、提供に責任を持つ1つ以上のシステムまたはアプリケーションを担当します。システムオーナーは、開発業務のコスト(およ びその他の影響)を継続的に見積もり、予測モデルを維持します。予測が予算を超えそうになると、潜在的または実際の超過を引き起こしている課題を解決するために、ペルソナ(Personas)間で協力する必要があります。
文書化されたコストと価値の範囲に対して提供される予算には、通常、予算オーナーへの保留金の配分も含まれます。この保留金は、特定の目的に配分されていないものの、予算期間中に必要な変更、超過、予測エラー、その他の軽微な修正に対応するために予算オーナーが利用できる資金と考えることができます。組織が成熟するにつれて、少なくともより安定したワークロードの予算編成を行う領域では、保留金の額やその使用ルールを削減できます。
システムオーナーが予算調整が必要であると判断した場合、解決に向けたプロセスは通常、以下のような手順に従います。
- 予算しきい値レポートが予算超過を予測する(エンジニアリング)
- 超過の理由を調査する(エンジニアリング、プロダクト)
- 最適化のための是正措置を講じる、または
- 予算オーナーを関与させ、保留金からの追加資金を要求する(エンジニアリング、プロダクト、予算オーナー)
- 追加資金が利用可能であり、調整の理由が理解された場合は、追加資金を割り当てる、または
- 上位レベルの予算オーナー、または財務チームに直接レビューを依頼する(エンジニアリング、予算オーナー、プロダクト、財務)
- 上位レベルの保留金から追加資金を割り当てる、または
- リーダ ーシップ(Leadership)を関与させて予算の支出レベルを調整し、組織の業績予測への影響を記録・調整する(エンジニアリング、プロダクト、財務、リーダーシップ)
- 予算調整を承認する、または
- 調整を却下し、実施すべき是正調整について協力する
上記は、実際の支出が予算に対して不利(アンフェイバブル)であることを前提としています。「予算に対して有利(フェイバブル)」という用語は、予算で計画されたよりも支出が少ないことを意味します。「予算に対して不利」という用語は、予算で計画されたよりも支出が多いことを意味します。
予算に対して不利な状況は、検出され次第すぐに対策を講じる必要があります。しかし、予算に対して大幅に有利な状況も理想的ではありません。未使用の保留金が多額に上る場合、他の領域への投資に活用できた可能性があります。予算サイクル内であっても、リスクや不確実性が十分に理解されたら、予算オーナーと財務チームは協力して、不要になった保留金を回収し、有効活用するための調整を行うべきです。
よりシンプルで、安定した、または定常状態にある組織では、予算の調整は時間の経過とともに減少し、予算サイクルごとに保留金を削減できます。非常にダイナミックであるか、クラウド利用が急成長している組織では、未知のワークロードや動的なワークロードを予測する際、資金調整の避けられないニーズに対応するために、より高額な保留金、または予算オーナー間のより多くの階層が必要になる場合があります。
予算サイクルの短縮や予算しきい値の拡張も、変化を管理す る効果的な方法です。予算サイクルを頻繁にすることで、組織はより頻繁に調整を行い、未指定の保留金を解放し、予測の課題を特定し、取り組みの方向性をより頻繁に修正できます。このプロセスを実行することで組織の「マッスルメモリー(身体的記憶)」が構築され、サイクル外の変更であっても日常的な業務にできます。この段階的な予算編成は、従来のITプロジェクトよりもペースが速く、頻繁に申請されるAI投資において特に有用です。
予算編成は主に財務チームが推進しますが、「すべての人が自分のテクノロジー利用に当事者意識を持つ」という原則に従うことで、組織は予算(および保留金)を組織全体の予算オーナーに分散させるべきです。これにより、予算オーナーは自身の管理範囲内で自律的に行動する権限を与えられ、予算承認がボトルネック(グリッドロック)になるリスクを回避し、組織全体がより迅速かつ効率的に運営できるようになります。
多くの組織では、予算を管理する方法が複数存在します。財務パートナーは、一部のシステムやビジネスユニット(Business Unit)の重要性に応じて、組織の特定の部門と異なる方法で連携する場合があります。R&D業務、純粋な社内ITシステム、顧客向けシステムは、それぞれ異なる方法で処理される場合があります。財務予算は、人件費、ライセンスコスト、クラウドのサステナビリティ(Sustainability)目標などの他のリソース予算と組み合わせることができます。
特に政府、公共セクター、または高度に規制された組織では、資金の調達元やタイミングによって、予算編成プロセスにさらなる制限が生じる場合もあります 。規制への準拠は複雑さを増大させ、より効率的な予算編成を妨げたり、理解して従うためにより多くの協力やプロセスを必要としたりする場合があります。FinOpsチームは、これらの要件を理解し、テクノロジーの利用が多様化するにつれて長期的な変化を促進する触媒となることができます。
成熟度アセスメント
クロール(Crawl)
- シンプルまたは安定したテクノロジー環境では、複雑な予算配分や構造を必要としないため、スプレッドシートなどのシンプルなツールを使用して、予算オーナーおよびシステムごとに予算を追跡する
- 予測を手動でレビューし、予算の作成に使用する
- 予算差異分析を手動または標準的なレポート機能を使用して行う
- 配分の不遵守または環境のシンプルさにより、予算の粒度が制限されている(ビジネスユニットやアプリケーションごとに一貫して利用できない)
- エンジニアリングチームがクラウドコスト予算の作成や、予測からの乖離、実績との比較の追跡に関与していない
- シンプルまたは安定したクラウド利用のため、予算の保留金は財務チームが中央で管理する
- 保留金の割り 当てプロセスが手動かつアドホックである
- 他のIT予算サイクルに合わせて、予算編成サイクルは年次である
ウォーク(Walk)
- より複雑または動的なテクノロジー環境に対応するため、より構造化された予算追跡の仕組みとツールを必要とする
- より複雑な予測モデルを使用して予算を確立する
- 予算サイクルが確立され、定期的なケイデンスで実行されるが、自動化はされていない
- ステークホルダーチーム(プロダクト、リーダーシップ、エンジニアリング、財務)が、クラウドコストの予測データと予算配分にアクセスできる
- FinOpsチームが、ステークホルダーチームおよび財務チームとともに、予算しきい値とトレンドを定期的にレビューするケイデンスがある
- 組織全体の少数の予算オーナーが、ビジネスユニットレベルで予算の保留金を管理する
- 保留金の割り当てプロセスと予算超過の解決プロセスは存在するが、自動化されておらず、全社的に使用されてもいない
- 予算編成サイクルは、年次サイクルと、より動的なシステムやクラウド利用が成長しているシステム向けの短いサイクルとのハイブリッドである
ラン(Run)
- 複雑な組織やテクノロジーの利用に対応するため、構造化および分散された予算追跡とツールの使用を必要とする
- 未配分のコストを防ぐために、配分メタデータ(Metadata)を適用するグローバルポリシーがある
- 多数のシステムまたはアプリケーションチームから集約された複雑な予測モデルを使用し、さまざまなメトリクスやパラメータを用いて予測を作成する
- 予算が、クラウドコストのレポートやチャージバックを行うために組織全体で使用されている配分構造と整合している
- 組織のKPIに関連付けて、詳細な予算の可視性(ビジネスユニット、コストセンター、チーム、プロダクト、サービス別など)を確保している
- ステークホルダーチーム(エグゼクティブ、エンジニアリング、財務)が、クラウド利用が予測トレンドや予算にどのように影響しているかについて、単一の真実のソース(Single Source of Truth)へのリアルタイムな可視性を持つ
- クラウドコスト予測データ、予算管理システム、および組織全体のレポートに使用されるバックエンド会計システムの間で、統合と自動化されたデータフローが実現している
- 組織全体の複数の予算オーナーが予算の保留金を管理する
- 保留金の割り当てプロセスと予算超過の解決プロセスが存在し、自動化され、全社的に義務付けられ、合理化されている
- 一貫した活動により、予測の収集、予算の配分、保留金しきい値の設定に対して一貫した自動アプローチが取られ、予算編成サイクルが短い(ローリング四半期)
機能的な活動
FinOps実践者(FinOps Practitioner)
FinOpsチームのロールとして、私は以下を行います。
- すべてのペルソナと協力して予算編成戦略と保留金戦略を確立し、その利用を強化する
- ビジネス目標に沿った予算編成のKPIの確立を支援する
- 予算超過が予想されるチームとともに、最適化の機会を模索する
- 財務チームとリーダーシップが予算を作成できるよう、クラウドコストの見積もりと予測モデルの収集を促進する
- ビジネス中心のさまざまなディメンション(属性)ごとに、実績支出対予算支出の詳細なレポートをチームに提供する
- 予算対実績対予測のレポートを提供してトレンドを確立し、差異KPIと比較する
プロダクト(Product)
プロダクトのロールとして、私は以下を行います。
- 目標とするビジネス成果の達成における費用対効果を測定するために、プロダクト中心のKPIを開発する
- 自身が所有するプロダクトに沿った予算しきい値の差異を追跡する
- エンジニアリングの担当者と協力して、これらのKPIを予算および予測モデルに反映する
財務(Finance)
財務のロールとして、私は以下を行います。
- 予測の提出期限や、予測の更新頻度に関する要件を確立する
- 詳細な予測データを集約し、合理的な精度で予算を編成する
- ビジネス目標に沿った予算編成のKPIの確立を支援する
- ビジネス中心のさまざまなディメンションごとに、実績支出対予算支出の詳細なレポートをチームに提供する
- 予算対実績対予測のレポートを提供してトレンドを確立し、差異KPIと比較する